1日1ジョーク

創作アメリカンジョークを公開しています。1日1更新。

入会者募集

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ある男が街を歩いていると、スポーツジムの入会者募集の張り紙を見つけた。

『説明だけでも聞きに来てください。美味しいドーナツと淹れたてのコーヒーをご用意してお待ちしています』

男は入会する気など微塵もなかったが、ちょうど小腹が空いていたこともあり、ドーナツ目当てに話を聞きに行くことにした。

激しい勧誘があるかもしれないと思ったが、男にはどんなに勧誘されても断る自信があった。

だが、男の予想とは違い、担当者は気弱そうな青年だった。

――これは思っていたより楽勝だな。

男は担当者の説明を聞き流しながら、ドーナツとコーヒーを堪能した。

担当者「というわけで、いかがでしょうか。今なら5千円で入会できますが」

男「いや、やめておくよ。今日は参考になった。ありがとう」

目的を果たした男は、もう帰ろうと席を立った。

店員「そうですか。残念ですね。入会していただいた方にはこちらのギフト券をお渡ししようと思っていたのですが」

男「ギフト券?」

店員は封筒からギフト券を取り出した。その額は1万円。

男はそれを見て足を止めた。

男「ちょっと質問いいかな」

店員「はい」

男「入会しても、すぐに解約はできるよな?」

店員「もちろん。気が変わることは誰にでもあることだと思いますので」

男は考えた。1万円分のギフト券が手に入るのであれば、入会金5千円を支払ったとしても、すぐに辞めれば5千円は儲かる計算になる。

男「そしたら、やっぱり入会しようかな」

店員「ホントですか? でも、先ほどははっきり断ってらしたのに、どうして急に入会する気になってくださったんですか?」

男「気が変わったんだよ」

店員「どうしてですか?」

店員が食い下がってくるので、男は面倒になって言った。

男「理由なんてないよ。あんたもさっき言ってただろ。気が変わるのはよくあることって」

店員「そうですか」

店員はそれ以上は追求してこなかった。

それから男は必要書類を記載し、入会の手続きを行った。

店員「では、お会計は9千円となります」

男「9千円? 5千円じゃないのか?」

店員「入会金は5千円になりますが、初月の月会費が4千円ですので、合わせて9千円となります」

男「そんなの聞いてないぞ」

店員「申し訳ありません。最初にご説明させていただいたつもりだったのですが」

男にはそんな説明を受けた記憶はなかった。しかし、最初は入会する気がなく聞き流していたため、聞き漏らしていた可能性はあった。

店員「どうされます? やっぱり入会は取り止めますか?」

男は考えた。9千円払っても、千円は儲かる。それに、もう手続きは済ましてしまったのだ。今さら取り止めて今までの時間を無駄にするよりも、千円でも儲けたほうがいい。

男「いや、いい。入会する」

そして男は9千円を支払い、無事入会を果たした。

男「さて、入会したことだし、そろそろ……」

店員「?」

男はそれとなく促したが、店員は気づかないようだった。仕方なく男ははっきり言った。

男「ほら、ギフト券だよ」

店員「ああ、ギフト券ですか。残念ですが、今はもうないんですよ」

男「ない? どういうことだ」

男が詰問すると、店員は言った。

店員「気が変わりました」