1日1ジョーク

創作アメリカンジョークを公開しています。1日1更新。

ワシントンの桜の木から、アメリカンジョークの構造を解説してみる

前回アメリカンジョークの定義を考察しました。

今回は有名なジョーク「ワシントンの桜の木」から、アメリカンジョークの構造を見ていきましょう。

ワシントンの桜の木とは

 では早速、ジョークをどうぞ。

先生「ワシントンが桜の木を切ったことを正直に話したとき、彼の父親はすぐに許しました。何故だか分かりますか?」

生徒「はーい。ワシントンはまだ斧を持っていたからだと思います」

いかがでしたか。

みなさん、オチはわかりましたか?

分からなかった方は、まず生徒の発言の裏の意味を考えてみましょう。

斧を持っていたから許したということは、斧を持っていなかったら許さなかったということです。

つまり父親は、桜の木を切られて激おこで、ワシントンのことを許す気はなかったのです(あくまで生徒の考えです)

それなのに、何故許したか。斧を持っていた場合と持っていなかった場合で何が違うのでしょうか。

考えてみてください。相手は斧を持っているのですよ? 許さないと言ったらどうなるか・・・

そうです。父親はワシントンが武器を持っていたから怖くて許したのです。(繰り返しになりますが、生徒の考えです)

さて、このスーパーおもしろジョーク「ワシントンの桜の木」ですが、どうしておもしろいのでしょうか。

ポイント1 オチを直接説明しない

前回ジョークの定義を「相手に事実を興味深く伝える手法」と説明しました。

今回のジョーク「ワシントンの桜の木」の事実にあたるものはなんでしょうか。

それは「父親は斧を持つワシントンを見て恐怖から許した、と生徒は思った」です。

ですが、それをそのまま言ってもアメリカンジョークにはなりません。

「まだ斧を持っていたから」という一見理由になっていなそうな言葉で締め、読者に自らその事実に気づかせることによって、おもしろくしているのです。

もしあなたが、取引先のお偉いさんの鼻毛が出ていることに気づいたとしましょう。

直接「鼻毛出てますよ」とは言いませんよね?

それと同じで、アメリカンジョークでオチを直接説明するのはご法度なのです。

ポイント2 読者をミスリードする

ポイント1で、オチを直接説明していないからこのジョークはおもしろいのだな、とわかったと思います。

しかし、実はそれだけではまだこのジョークのおもしろさの半分も伝わらないのです。

このジョークの前提として、ワシントンの逸話があります。

ワシントンは子供の頃、プレゼントされた斧の切れ味を試すために、父親の大切にしていた桜の木を切ってしまいました。しかしワシントンはそのことをごまかさず、父親に正直に打ち明けたのです。すると父親は「お前の正直な答えは千本の桜の木より値打ちがある」とその正直さを褒め称えました。めでたしめでたし

この逸話は、正直さが大事だよという教訓を伝え、アメリカ人のほとんどはこの逸話を学んで育っています(この逸話は作り話という説がありますが)

つまりアメリカ人は、このジョークの最初のセリフを読んだとき、生徒の答えに予想がつくわけです。

「ハハン、この生徒は『ワシントンが正直だったからです』と答えるんだろう」とオチを読む前に結果が見えているのです。

しかし、それは裏切られ、衝撃の結果が読者を待ち受けるのです。

この裏切りがアメリカンジョークでは大事なものとなってきます。(アメリカンジョークでは、です。日常生活で裏切るのはおすすめしません)

ミステリーでは、うまい作者は読者をミスリードします。怪しい奴を用意しておき、読者にはそいつを疑わせておくことで、犯人の意外性を際立たせるのです。

それと同じで、アメリカンジョークもミスリードが大事なのです。

ポイント3 伏線を張っておく

さて、名作ジョーク「ワシントンの桜の木」ですが、このジョークのオチが以下だったらどうでしょう。

先生「ワシントンが桜の木を切ったことを正直に話したとき、彼の父親はすぐに許しました。何故だか分かりますか?」

生徒「はーい。ワシントンはを持っていたからだと思います」

・・・

いやーどうしよう。オチを変えると劇的につまんなくなって台無しになるという例を示そうと思ったのに、ちょっとおもしろい・・・。

えー、気を取り直して。

ひどいジョークですね。

父親はワシントンの正直さが嬉しかったから許したのではなく、実はワシントンが何をするか分からず怖かったからという流れ自体は同じですが、オチに必然性がありません。

ワシントンが銃マニアという描写が前にあればまだ別ですが、いきなり銃が出てきても唐突過ぎます。

ミステリーで言うと、まだ一度も登場していない人物が犯人だった、という感じでしょうか。

それに、この改変の場合はオチを直接説明し過ぎになってしまい、ポイント1の条件も満たせなくなります。

その意味でジョーク「ワシントンの桜の木」は、斧という小道具をうまく利用した秀逸なジョークと言えるでしょう。

ということで、オチが不自然にならないよう、ミステリーでもアメリカンジョークでも伏線は必要だよ、というお話でした。

アメリカンジョークの構造 まとめ

アメリカンジョークは、以下の3つのポイントがおもしろさの秘訣なのです。

  1. オチを直接説明しない
  2. 読者をミスリードする
  3. 伏線を張っておく